ベトナムのニュースから第11回~ぼったくりにご用心~

旅行者の皆さまもご用心!

初めての方はもちろんのこと、リピーターの方も完全には気が抜けないのがベトナム旅行。気が抜けないのはベトナム在住の日本人だって、ベトナム人だって同じなんです。今回は旅行者の皆様に直接関係するニュースを取り上げます。

[1.ブンタウのレストランで]

ベトナムのニュースから第11回~ぼったくりにご用心~ ニュースぼったくり ベトナムのニュースから第11回~ぼったくりにご用心~ ニュースぼったくり
ホーチミン市の約125km南東に位置するビーチリゾート、ブンタウ(Vũng Tàu)。ホーチミン市から船で約1時間20分、車でも約2時間30分という近さが、海辺を気軽に楽しみたい人々をひきつけている(ナビゴン&とよぞうさんのブンタウ旅行記もあります )。そのブンタウについて、2010年8月に話題となったニュースをご紹介しよう。
「最近ブンタウを訪れた旅行客の多くがぼったくり営業の店の罠にかかっている。2010年7月、ホーチミン市在住ホアンさん含む三名は、仕事でブンタウを訪れた。夕食をとるためタクシーを呼んだところ、タクシー運転手は素早くおすすめレストランを紹介してきた。そのレストランの名は『トゥン ゴック トゥイー(Tùng Ngọc Thủy)』。ホアンさん達が注文したのは、カインチュア(タマリンドで味付けした甘酸っぱいスープ)、エビの甘辛炒め煮、サラダ、白ご飯、お茶。それで会計が1,191,000ドン(約5,200円)だったのだ(ベトナム人労働者の2009年度平均月収は2,800,000ドン:約12,000円なので、月収の半分ほどをぼったくられたとご想像ください)。中でもエビの甘辛炒め煮は、親指サイズのブラックタイガーが6匹しか入っていなかったのに585,000ドン(約2,500円)の値段がつけられていた。怒りのあまりホアンさんは知り合いを通して役所に通報した。
レストラン「トゥン ゴック トゥイー」の被害者の方と証拠の請求書

レストラン「トゥン ゴック トゥイー」の被害者の方と証拠の請求書

法外な料金を請求するこのような飲食店は、旅行客が宿泊することの多いバックビーチ(※1)周辺に集中している。客を連れてきたタクシー、シクロの運転手にリベートを支払っている店も多く、中には呼びこみ専門にバイクの勧誘部隊を雇ってビラを配らせているところも。
ホーチミン市から旅行でブンタウを訪れたタンさんはこう言う。『7月5日、家族で海水浴に行きました。若い男性がしきりにつきまとい、開店したてのレストランについて料理が安くておいしいとしつこく勧誘してきました。その店の料理は飲み込めないぐらいまずかったのですが、1,600,000ドン(約7,000円)も請求されたんです。』曖昧な価格表示がその店の罠だった。カインチュア(甘酸っぱいスープ)、エビの甘辛炒め煮、野菜炒めが、一皿25,000~75,000ドン(110~330円)という相場並みの値段でメニューに書かれているのに、会計になると請求額が変わる。例えば、メニューに50,000ドン(約220円)と書いてあったカインチュアには、請求時に『バラマンディ(白身魚の一種 ※2)1.2kg、450,000ドン(約2,000円)』という料金がつけ足される。エビの中華煮は、6匹のオニ手長エビ1.5kg、750,000ドン(約3,300円)と書き足される。野菜炒めには申し訳程度のイカとエビを加えた上で、値段を200,000ドン(約870円)につり上げる。つまり、メニューに表示されている料理の代金と、料理内に入っているシーフードは別料金というからくりなのだ。
写真は直接本文とは関係ありません(以下同様)
写真は直接本文とは関係ありません(以下同様)

写真は直接本文とは関係ありません(以下同様)

地元の顔利きまでがぼったくりの対象に。ホアン ホア タム(Hoàng Hoa Thám)通りのとあるレストランで、チョンさんは会計1,000,000ドン(約4,350円)と吹っ掛けられた。バラマンディの入った鍋だけで600,000ドン(約2,600円)取られようとしていた。チョンさんが地元の顔利きだと分かった店側は、代金を返却した。」

記事の後半は、自治体側の弁明が続く。

「飲食店でのぼったくりは最近に始まった話ではなく、自治体としても長年力を入れて取り組んでいる問題だ。連絡を受ければ役員がすぐに現場に駆けつけるようにしている。飲食店の許可取り消しを目指しているが、そういった業者は店の名前を変えたり責任者を変えたりして新たな許可証をとる。それを法律上禁ずることができない。またもう一つ難しい点は、料理が客の腹の中に収まってしまっているということだ。たとえば客側が『エビは親指ぐらいの大きさだった』と主張しても、店側が『手首ぐらいの太さはあった』と主張したりする。実際どのような料理だったか確かめるすべがないので、詐欺罪とするにも対処が難しい。」

[2.続々と寄せられる体験談、飛び交う意見]

ベトナムのニュースから第11回~ぼったくりにご用心~ ニュースぼったくり ベトナムのニュースから第11回~ぼったくりにご用心~ ニュースぼったくり
ブンタウのぼったくり問題に関連する記事がその後数日にわたり掲載され、新聞社に送られた読者の意見も数百にのぼったことが伝えられた。意見の多くは自分もその店でひっかかった!という体験談で、そのほとんどのケースがタクシー、シクロの運転手にすすめられるままに、またバイクに乗った若者の配るビラにつられて罠にかかってしまったという話だ。引っかかったほとんどの人が、最終的にしぶしぶ請求額を支払ったと述べている。というのも、言い争おうとするとガラの悪い従業員が殺気立ってすごむそうで、その場から一刻も早く立ち去りたい一心からお金を払ってしまうようなのだ。

ある不運な夫婦が以下のように紹介されていた。

「2010年6月、ラムさんは妻と二人の子供を連れ、遠くクワンチ省(ベトナム中部)からブンタウに出稼ぎにきた。レストラン『トゥン ゴック トゥイー』に食事に行き、カニの鍋を頼んだ。食後、レシートの992,000ドン(約4,300円)という数字を見てラムさんは驚愕した。妻はこう語る。『支払いの時、怒りのあまり泣きそうでした。私たち夫婦の全財産は1,200,000ドン(約5,200円)だったんです』。ラムさんの頼んだ料理は、小さなカニ3匹の入った鍋と、2缶の清涼飲料水だけだった。」

飲食店以外にも罠があるようで、読者の意見コーナーにはこのような体験談も寄せられていた。
「先日ブンタウのバックビーチで海水浴をしました。子供から連絡があるかどうか気をつけていないといけなかったので、携帯を持って行きました。海水浴場の荷物預かり所でロッカー代30,000ドン(約130円)を払い、荷物を預けて泳ぎに行きました。30分後、携帯をチェックするためロッカーを開けてもらおうとすると、そこの職員は開けるのに30,000ドン払えと言うんです。一度開けるたびに30,000ドンだと。有名な観光地なのに客からこれでもかと金を絞りとろうとする姿勢が理解できません。帰り道、こんな状態ではベトナムの観光業は進歩しないぞとずっと考えていました。」

ロッカーだけでなく、ホテルでもそういった話があるようだ。

「知り合いを訪ねてブンタウに行きました。テト(旧正月)の時期でどこのホテルも二人部屋が一泊700,000ドン(約3,050円)でした。仕方がないのでそこそこ清潔そうで冷房がよく効くと宣伝しているホテルを選びました。けれど夜にエアコンが効かなくなったんです。扇風機を貸してほしいとホテルのオーナーに言うと、700,000ドンの部屋はそんなものだ、扇風機を使いたいのならもう200,000ドン(約870円)払えと言われたんです。」

外国人男性からも、ブンタウのとあるバーでの体験談が寄せられた。

「ホテルがあんまり停電するので、ノートパソコンで仕事もできず、何より部屋が暑すぎたので、外出してブルームーン(Blue Moon)というバーに飲みに行きました。女性のコンパニオンが丁寧な態度で席に案内してくれましたが、メニューを見せながら、洋酒をボトルで頼むか、ビールかカクテルなら5杯以上注文することを強要するんです。僕らはもう他でビールを飲んできているからそんなに飲めないと説明しました(本当の理由は法外な値段の高さだったのですが)。すると女性コンパニオンは冷たい態度で行ってしまうわ、守衛は無言で首を横に振るわ。騒ぎを起こしたくなかったので、結局、自主的に出て行かざるを得ませんでした。」

ブンタウの住人からもたくさんの意見が寄せられ、その中にはこんなものも。

「私はブンタウで飲食店を経営しております。本当に恥ずかしいことです。まさに『一匹の虫がスープをダメにする(ベトナムのことわざ、一部の人の悪行が全体をダメにしてしまうこと)』とはこのこと。ブンタウに旅行に来る方は、まずその土地に詳しい人を見つけてほしいと思います。」

その他、とくに海水浴場沿いの店がよろしくない、ホアン ホア タム(Hoàng Hoa Thám)通りの店のほとんどは避けた方がいいと言う情報も。また、長期的にどう集客していくかを考えずに目先の利益ばかり追うやり方を嘆いたり、ブンタウだけの話ではない、ブンタウはベトナム観光全体の縮図だと憂う意見も多かった。
救済ホットラインの番号が書かれた看板

救済ホットラインの番号が書かれた看板

具体的な対策を求める声が多く、ぼったくり被害者救済ホットラインの電話番号が書かれた看板が設置されたことも伝えられた(写真)。現場から電話すればすぐに役所の人が駆けつけるそうで、実際に請求額が半額になった!という声も。
8月13日、多くの被害者から実名で挙げられていたレストラン『トゥン ゴック トゥイー(Tùng Ngọc Thủy)』に対し、750,000ドン(約3,260円)の罰金が科されたことが報じられた。しかしこの報道は「750,000ドン?安すぎる!客を一組ぼったくれば罰金払える。他の業者への見せしめ効果に全くならない。」といった怒涛のような反発を招く結果に。中には「重い罰金だこと!店も破産するだろうね。あー恐ろしい。」という皮肉まで。

[3. ぼったくり対策、基本的なこと]


ベトナム人でも引っかかってしまう、ぼったくりの罠の数々。外国人旅行客は、彼らにとって格好のカモだろう。ここまで読んでくださった方は旅行に際しておそらく慎重派の方なのではないだろうか。そういう皆様には基本的すぎる内容とも思うが、改めてぼったくり飲食店の対策をまとめてみようと思う。

まずレストランを選ぶ段階では、どれだけ人が良さそうだと思っても決してタクシーの運転手さんにすすめられるがままにつれて行かれないこと。ビラ配りの勧誘にも注意。ガイドブック、インターネットなどであらかじめ評判の良いお店を調べておくのが安心。行き当たりばったりの旅が好きな人は、地元の人でにぎわっているお店、なおかつそのお客さんたちが楽しそうに飲食しているかどうかを見て判断してほしい。おすすめのお店を地元の人に聞いてみたい場合は、ホテルの受付で聞き、また街中でも聞くなど、二か所以上で聞いてみてはどうだろうか。

料理を注文する段階では、恥ずかしがらずにハッキリと値段確認をすること。特にメニューに書いていない料理をすすめられたら要注意。値段は紙に書いてもらうと分かりやすい。デジカメ持参であれば、メニューを写真に撮る。そういう時の従業員の態度が怖い場合は、料理を頼む前に出て行くこともできる。料理が来たら、食べる前にやはり写真を撮っておくといいかもしれない。

今回のようなニュース記事を読むと、安全ボケしていると言われる日本人の私は冷や汗をかく。旅行情報の共有は身を助けることもあるので、ベトナムナビのコミュニティー もぜひのぞいていただきたい。ただ、旅先で嫌な思いをしたくないけれど地元の人との出会いも大切にしたいし、いちいち人を疑ってかかるのは疲れるのも事実。もしぼったくられたとしても、経験値を稼いだようなもんだ、今後の旅行に生かそうじゃないか、思い出話がまたひとつ増えたな、というような心持で旅行を楽しめるようになりたいものだ。
フーコック島にて フーコック島にて

フーコック島にて


※1 Bãi Sau:バイサウ、サウビーチ、もしくはBãi Thùy Vân:バイトゥイーヴァン、トゥイーヴァンビーチとも。Bãi:バイは「ビーチ」の意味。
※2 スズキ目アカメ科に属する魚の一種。くせのない白身魚。

[参照]
Tuoi Tre紙 2010年8月3日、8月4日、8月5日、8月6日、8月13日付

関連タグ:ニュースぼったくり

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2010-08-31

ページTOPへ▲

その他の記事を見る