新興国として東南アジアのベトナムの発展をうかがう。
こんにちは、ベトナムナビです。今回は旅行者以外でもベトナムの文化、歴史、経済、政治に興味がある方を対象に、ベトナムの今をご紹介したいと思います。ベトナムは新興国(発展途上国)として現在経済の転換期。そのベトナムに住んでいると、目と鼻、耳、そして肌で現在進行形の発展を感じることができます。少しディープなベトナムの情報を5つご紹介したいと思います。
① バイク天国から車への変遷
ベトナムではどこの都市も右を見ても左を見ても縦横無尽に走るバイクを見かけます。名実ともにバイク天国のベトナムですが、ここ10年で大分車も増えてきました。車の販売台数は2016年度で初の30万台を突破しました。ではこのまま順調に伸びていくのかというと、そうではないという予想が多いようです。ベトナムでは都市化に伴う交通渋滞の緩和を目的に、車に対して高い関税をかけており、日本人が日本で買うよりもおよそ2倍の値段を出さなければ買えないのが現状。もしこの関税が低くなれば、ベトナムも近い将来他の国と同様にバイク天国から車社会へ変遷することでしょう。
また、現状はレストランやカフェなどの商業施設において、車の駐車スペースを設けているところは10%未満。警備員の指示のもと路上駐車をすることになり、これがまた渋滞を呼んでいます。東南アジアの盟主であるタイは70万台。同じ時代、同じ地域であるにもかかわらず販売台数に2倍以上の差があるのは、ベトナムの道路整備が著しく遅れている証拠。ちなみに車が常となった日本の2016年度販売台数は約500万台。先進国の顔をのぞかせています。
② GDPと経済成長率からみるベトナム人の所得事情
その国の国民一人当たりの所得を表す指標に、しばしばGDPが使われます。毎年世界のGDPを公開しているIMF統計によると、ベトナムの2016年度GDPは2100ドル。ざっくり勘定すると、一人当たりの年収は21万円程度という意味です。これは月収ではなく年収です。大卒の初任給は日本円にすると2万円~4万円程度。最低賃金は最も高いホーチミン市で17500円(350万ドン)となります。
経済成長率は5~7%で推移。ベトナムは社会主義で、長らく国営企業が経済のすべてでした。そのため発展が遅く、1990年代初頭は2万円を切っていました。1986年、市場開放を目的としたドイモイ政策の効果が表われはじめたのは90年代後半以降。それ以後は着々の国民所得は伸びています。しかし、経済格差は以前と大きく、また日本のような生活保護制度もないため、困窮者が続出している現状もあります。ただし、それも新興国が通る道とも言えます。ベトナムの成長率がこのまま長きにわたって続くという識者も多く、またベトナムは近い将来人口1億人の大国になることが予想されているため、驚くほどの経済大国になる器、潜在力を持っていると期待もできます。
③ 旅行中で体験できる。コーヒー一杯の値段
2016年度のGDPは2100ドルとご紹介しましたが、これは国内人口で割っているだけなので、地域差を考慮していません。日本でも都心と郊外では給料や時給は異なりますね。それがベトナムのような新興国であれば、その格差はちょっと信じられないほど大きくなります。例えば同じ年齢の友人の給料は業種によって変われど、そう大した違いはありませんね。しかし、ベトナムでは5倍以上違うことも普通。
また物価も同じです。路上カフェで一杯コーヒーが50円で売っていれば、その横の冷房付きのカフェでは一杯500円で売っている。それが現在のベトナムの本質です。郊外では200万円~400万円の戸建てを建てて、懸命に返済する生活を強いられている一方、都心では1500万~3000万円の高級マンションが飛ぶように売れていき、戸建てとなると土地付きで1億以上するところも珍しくありません。バブルがはじけたときが恐ろしいと言う日本人もいますし、これはバブルではなくベトナムの普通なのでは?と見る方もいます。
④ 社会主義共和国を知る
ベトナムは世界でもわずかとなりつつある社会主義国。世界を見ると、中国や北朝鮮、キューバにラオス、そしてベトナムの5か国のみ。一党独裁制を敷いて、マルクス・レーニン主義を政治の根本理念としています。元首は国家主席で、首相は3番手の扱いです。一院制で党員はベトナムの理想の政治と社会を握る共産党員。中国や北朝鮮を見ても分かるように、出版物などすべてが規制されて、政治批判を公衆やSNSを介して行うと、国家転覆罪として重罪となります。
公で政府の悪口を言うことはできませんし、公安警察が非常に強い力を握っているため、それに伴う賄賂も蔓延しています。中国と同じ不満と不安を抱えていて、革命軍の結束を恐れている反面、少しではありますがデモを許容してガス抜きさせていることもいえます。ただ、ベトナムはドイモイ政策以後制限付きで財産を認めています。土地も50年の1回更新という期限つきではありますが、所有することもできるようになりました。近年は外国人もマンションを購入することができるようになり、外国人投資家による投機売買も盛んに行われています。
⑤ 大気汚染も将来的に問題となることが予想
これはベトナムだけではなく、世界の新興国が歩む道で、日本も世界から大気汚染国として批判されていたことがあります。高度経済成長期のベトナムはいまがその真っただ中。工業化が進み、二酸化炭素、一酸化炭素を排出する量が極端に増えてきています。特に多いのは北部。工業地帯が多く、一時中国で問題となったSPMの量も基準値よりも1.5倍多いのが現状。特に工業地帯の最高排出量はアフガニスタンやシリアといった中近東と同程度。
一方南部は大気汚染度指数で言えば、「軽度」の部類でまだ大きな問題はありません。しかし、朝夕の通勤時間はけたたましいバイクの排気ガスが町全体を覆います。歩行者もバイクの運転手もみんなマスクを着用していますので、旅行者も彼らに倣う必要があります。ベトナムに長く住んでいると、日本へ帰ったときに空気の綺麗さが身に沁みます。
いかがでしたか。著しい経済発展を遂げている一方で、御覧のような政治と経済情勢もあることが分かります。とはいえ、それらひっくるめて、良くも悪くも発展途上国のベトナムの素顔。旅行だけでは感じ取ることができないベトナムをご紹介しました。以上、ベトナムナビがお届けしました!
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記事登録日:2017-09-08